自己紹介①~専門学校で知った自分の本当の声
私は、某大手ボーカルスクールで、約9年間ボーカルインストラクターとして勤務していた音大好き人間です。
父親が演歌歌手であり(今も現役)、母親は民謡歌手でした。
当然ながら、その遺伝子を引き継ぎ、幼少期から歌うことが好きな子供だったわけです。
3歳のころから、自作のオリジナルソングを延々と歌い続けて、とにかく四六時中おもちゃのマイクを手放しませんでした。
小学生の時に初めて聴いた、沖縄の歌手である石嶺聡子さんの「花」という曲に感動し、心を打たれました。
小学生ながらに、なんていい曲なんだろうと何回も聴きました。
曲のサビである「泣きなさい 笑いなさい いつの日か いつの日か 花を咲かそうよ」
実にシンプルでストレートな歌詞で、当時の私の心にささりました。
そんな運命の曲と出会い(大げさな?)、人の心を動かすような歌い手に憧れを持ち始めた小6のころの事でした。
とは言っても、実際に本格的に歌を始めたのは、高校卒業後からです。
私は、音楽専門学校に入学し、ある事実を知ることになります。
私は、元々音感は良い方だったので、音楽の授業では、ハモリができるアルトパートが好きでした。専門学校に入学するまでは、自分の声はイケてるんじゃないかと妙に変な自信があったのです。
今思うと、とんでもない自信家だなと恥ずかしく思うほどです。
しかし!
専門学校に入学し、初めて人前で(友達でもなく知らない人たち)歌った時に気づいたのです。
「私は地声で歌えていなかった!?」
ということを。
常に、裏声(別名ファルセット)で歌っていたことに初めて気づいたのがその時でした。
「あれ? 今出ているこの違和感ありまくりの声は一体なんなんだ?」
その違和感こそが、私が初めて出した「地声」での歌だったんです。
女性の人はわかると思いますが、合唱などでソプラノの人は裏声を使い、「ふわ~」っとした優しい声で歌うことが多いです。
合唱で、地声を出してしまうと、まわりの声と比べて強くて浮いてしまうので、自然と裏声を使っているのです。
そのために、女性はこの裏声が得意な人が多く、コーラスをやっている女性は裏声が綺麗な人が多いのも特徴です。
しかし、そのまま大人になり、ポップスの曲をカラオケで歌うときも、裏声を使う人が意外と多いのです。
私もそんな一人だったわけです。
合唱やコーラスは、裏声が綺麗でいいのですが、ポップスやロックなどの曲を裏声のまま歌うとどうなると思いますか?
答えは、弱いです!
裏声だと、地声よりも声量(声の大きさ)がなく、頑張っても息が漏れていくような感覚で、カラオケの後ろの音にかき消されてしまいます。
そして、何より、息をすごく消費するので地声で歌うよりもきついです。
私と同じような生徒さんをこれまでに何人も見てきました。自分が経験したからこそわかるんです。
で、どうすればいいのか?と気になりますよね?
まず、私の場合は、出してみた声がたまたま地声だったのですが、なぜその時に初めて地声が出たのかというと、それまではカラオケに行っても自分の出しやすい声(裏声)で軽く歌っていたのですが、その時は、クラス決めの審査ということで歌ったため、私なりに気合が入ったのか?いつもよりも思い切り歌ったのです。
「思いっきり声を出す」
これが、地声を出す最初の秘訣です。
裏声の人は、まず自分の地声と裏声の区別がついていない人も多いです。
「えっ? 私の出していた声って裏声だったんだ?」
とレッスンを通して初めて気づく人もいます。
そうすると、次に疑問がわくのが、
「じゃあ地声ってどんな声?」
まず、地声を出したことがない人にとっては、未知の世界です。
どうやって地声を確認するのか?
それは、大きな声を出すことです。とにかく、大きな声を思いっきり出してみてください。
多くの人は、恥ずかしさが先立ち、声を出すのをためらいます。
しかし、地声を引き出すには、まずはその壁を打ち破りましょう。
どうしてもわからないという人は、普段しゃべっている声が地声なので、そのまま出して、徐々に高い音を出してみてください。
途中で裏声にひっくり返る場所があるはずです。
話がそれましたが、専門学校入学時にそんな事実を知った私はとにかくショックでした。
私にとって違和感がある地声は、不安定なうえ、声が震えていたことを覚えています。
今まで、自分は人より歌えるんじゃないかという根拠のない自信が、一気に崩れ落ちた瞬間でした。
そこから、自分の声との格闘が始まるのです。